ここでは便宜上、前者を A タイプ:競技志向、後者を B タイプ:交流志向とし、両極端でまと める試みをする。むろん、この2つのタイプは明確に線引きが存在するわけではないが、この2 タイプを一緒に考えると相矛盾する結論になる可能性があり、あえてここでは分けて考察するこ ととした。 ②オリエンテーリングから遠ざかる要因 A タイプ:競技志向の場合、大学ではインカレなど明確な目標に向かっていたが、卒業すると、 明確な目標、言い換えればオリエンテーリングの競技的な魅力に物足りなさを感じていると思わ れる。アンケートの問3(オリエンテーリングに感じている魅力は何ですか?)では、男性、女 性ともに、競技性が1位であり、逆に問4(女性がオリエンテーリングを続けられないとしたら どんな場合ですか?)では「魅力低下」は下位にとどまっている。これらからオリエンテーリン グを続けたいと思わせる最大の要因は競技性の魅力にあると思われる。 その上で、オリエンテーリングから遠ざかってしまう要因は3つほどあると考えられる。 1つ目は、一度やめてしまうと競技力や体力への自信がなくなり、復帰に自信がないという点で ある。そのような自由意見も見られた。 2つ目は、かつて上級クラスに参加していた女性は、中級クラスのコースでは競技性に満足を感 じることができないが、かといって、本格的な大会、特に遠くで開催される大会の上級コースに 出場するほどのきっかけがつかめていないと思える点である。そのきっかけはやはり仲間の存在 が重要なウェイトを占めているように思われる。女性が一人で大会へ遠征して、会場でひとり着 替えて参加して帰宅する、というのは、男性ではよくあるが、やはり女性となるとかなり厳しい ものがあり、世界を目指すようなTOP選手でなければ考えにくい。 3つ目は、オリエンテーリングではなく、トレランやロゲインなど他のスポーツにより魅力を感 じるという点である。基本的に1人で競技するオリエンテーリングに対し、これらスポーツは複 数で一緒に参加することができるため、仲間を誘いやすいという意見もある。また、オリエンテ ーリングと比べ「汚さ」がないので、ランナーなど他のスポーツをする女性を誘いやすいとも思 われる。 B タイプ:交流志向の場合、大学の卒業などの交際環境の変化、さらには家庭環境の変化、特に 子供や配偶者の存在が大きいと思われる。大会などへ参加しても、交流できる仲間がいなければ、 オリエンテーリングそのものは楽しめても、参加しようという駆動力にはなりえない。大学時代 は部活へいけば仲間がいるのに対し、大会では行ってみないといるかどうかわからない。かつて のオリエンテーリング仲間を誘うというのも、相手の事情や感情を察することができるだけに誘 いにくいという事情もあるようである。 加えて、既婚あるいは子供がいる女性では、子供の行事が優先してしまうし、配偶者の理解が 得られなければ、やはりひとり大会へ参加するのはかなり難しいと思わせる自由意見が多い。ア ンケートの問3の自由意見では、男性は「オリエンテーリングとともに成長してきたから」とか 「いろいろな意味での勉強」といった、自己実現あるいは自己成長のひとつとしてとらえている 側面があるのに対し、子供をもつ女性では、まず子供の成長が優先され、自分の趣味のため子供 を連れて大会へ参加する、というのには抵抗感があると思われる。例えば女性同士でランチにい くような気軽さで参加できる大会はなく、大なり小なり家族の犠牲あるいは理解がなければ大会 - 19 -